Yaleで、遊んで学ぶ日々。
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囲碁、ときどきプログラミング、ところにより経済。
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プロの碁打ちの中で誰のファンか聞かれれば、僕は一番に依田紀基九段を挙げる。現役最強なら日本では張栩棋聖、山下名人、井山天元あたり。世界最強となると、中韓の棋士の栄枯盛衰が激しすぎて定義が難しい。それでも僕が依田九段を推す理由は、彼の碁に対する考え方が学者然としていて、強く共感するからである。多少大げさにいえば、勝利ではなく碁の真理を探求する姿勢が、依田九段の言葉の端々から読み取れるように思えるのである。同じ理由で、故梶原武雄九段や王銘エン九段も好き。
一流棋士の石を筋に持って行く手順も、この理論でほとんど説明できると言って過言ではない
いままでの手筋書では手筋について、「こう打つ石の調子」などとあいまいな表現だったのが、筋場理論では手筋をはっきり定義できる
大家の先生がその本の中で手筋講座をされていますが、その内容の全てが筋場理論で説明できる
いままでの手筋書では手筋について、「こう打つ石の調子」などとあいまいな表現だったのが、筋場理論では手筋をはっきり定義できる
大家の先生がその本の中で手筋講座をされていますが、その内容の全てが筋場理論で説明できる
と、どうやらいわゆる「筋」という曖昧なものに対して一貫性のある説明をつけるというもののようだ。良い手、悪い手を判定する公式のようなものを開発したってところだろうか。今までばらばらに理解されてきたものをひとくくりにする上位概念の提示であり、一言で言うと一般化である。
なぜ一般化は嬉しいのか。一般的であればあるほど良いというのは当たり前のようで、実はそこまで明らかではない。すでに知られている筋を1つの理論のもとに説明できるということは、強くなることにつながるだろうか。読みの優れた人や、十分筋に明るい人にとっては得るものは少ない。というのも、そういう人たちは理論に拠らずとも答えを出せてしまうからだ。理論が力を発揮するのは、囲碁を習いたての人に筋を説明する時だろう。依田九段自身、次のように書いている。「プロ棋士は感覚でわかっていることなので、自分が碁に勝つためだけで、人に教えようとしなければ、言葉にする必要がない」
依田九段が筋場理論に興奮しているのは、一つには彼が現在塾を開講していて筋を説明する必要があるということがあるだろう。しかしそれ以上に、統一的な理論の発見し、碁の真理に一歩近づいたことを喜んでいるように見える。
ところで、一般的な理論はすでに筋を理解しているプロには効用はないが、一方でコンピュータには非常に有益だ。筋をプログラムすることが難しいのは、そもそも筋を定義することが難しいからであって、もし筋場理論が(僕はまだその全貌を知らないけど)明確な定義を提供できるならば、筋を理解する囲碁AIを作ることができるかもしれない。現在、最も強い囲碁AIは、最近話題になったZenを始めとして、モンテカルロ法をベースにしたアルゴリズムで動いている→Zen関連の記事。これらは筋を理解しない。彼らにとって、筋はその場で見つけるものなのだ。依田九段の理論が、モンテカルロ王国への対抗勢力を生み出すことになったら面白い。
筋となると石がぶつかった時の話だが、一方で王銘エン九段の指摘する囲碁AIによるエリア認識の問題も興味深い→メイエン事件簿。彼の著作はエリア(昔はゾーンと呼んでいた)を何とか定義しようという試みで非常に面白い。彼の謙虚な動機づけを引用する。
私達の前に立ちはだかる無限の壁。それを読みで押し倒す者あれば、感覚で軽々と飛び越える者あり。されど、そのいずれもできずとも壁によじ登り、超えてゆこうとする者よ、ゾーンを信ずる心はそなたの足場となり、そなたの力となり、そなたの支えとなるだろう(王銘エン『ゾーンプレスパーク』日本棋院, 2003)
読みのすごいやつとがっぷり組み合っても勝てんのだから、何か総じてうまくいく行動指針が欲しい、ということのようだ。方向性こそ違えど、これも一般的な理論を探求するという意味において依田九段と同じだと僕は捉えている。
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