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Yaleで、遊んで学ぶ日々。

Yaleで、遊んで学ぶ日々。

囲碁、ときどきプログラミング、ところにより経済。
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prosecutor, summons, probation, misdemeanor...

というような単語が分かる人ってどれくらいいるだろう。僕は、5年前に国際刑事法を勉強した時に使った記憶が微かにあるけど、まさか実生活で使う日が来るとは夢にも思わなかった。

ある冬の日の未明、ドジを踏んで鍵を持たずに外へ出てしまった僕は、オートロックの寮に入ることができなくなり、混乱のあまり(中略)火災報知機を鳴らしてしまった。火災報知機に反応して消防車が2台とパトカーが3台寮までやってきた。消防士に平謝りして、警察官には事情聴取を受けた。女の若い警察官に「あんた歳は?」と聞かれたので「25」と答えたら、「火災報知機鳴らしたらどうなるか分からない年齢かしら」と叱られた。

聴取のあと、警察官にMisdemeanor Summons と書かれた一片の紙切れを渡された。軽犯罪事件に関する裁判所への召喚状だ。事件がないのに警察や消防に嘘の連絡することが州法に違反するらしい。事件名は "State v KM"。


そういうわけで、裁判所への出廷を命じられたわけだが、悪意もないしちょっとしくじっただけなんだからどうってことはないだろうと社会科見学気分 でいたら、学部のdirectorから「ちゃんとした弁護士を雇ってくれ。前にうちの学生の事件を扱った人を紹介するから」と言われ、弁護士を探すことに。学部としては、法律にも英語にも力不足の僕が裁判官の前で不適切な発言をして事を難しくする事態を避けたいらしい。まずは、大学の Law Schoolに通う友人に、日本人のLaw School生を紹介してもらうことに。あわよくば誰か無料で助けてくれる人がいるのではなんて期待を持っていたが、そんな美味しい話はなかった。彼に相談して分かったことは、事件自体は軽微でも適用される法令は重罪扱いなので真剣に対策を練る必要があること だった。どうも、その法令、爆弾魔に適用されることを意図して作られたらしい。

次にOffice of International Students and Scholars (OISS)へ行く。困ったことのある留学生はまずここへ行くのがいい。担当の人に会うと開口一番「あなたがKateね!」と言われた。よくある間違いである。彼女は、僕の事件のことをすで にどこからか聞いていて、もし僕が訪れなければ向こうから連絡をくれるつもりだったらしい。学部のdirectorにしろ、OISSにしろ、情報の流れが ずいぶんしっかりしている。隠し事はできない。

彼女によると、事件そのものは小さいが、visa statusへの影響がないように注意を払う必要があるとのこと。具体的には、米国にまだいたいならnullやdismissalを獲得しなければいけな い。こういう場合、刑事事件の専門家と移民法の専門家の両方に相談に行くべきだということで、OISSお勧めの弁護士リストをもらう。

she: "You will be okay in any case.  I don't think this case is going to be serious at all.  I've been working in this office for ten years and know lots of cases much more difficult than yours"
me:  "But among the cases you have seen in ten years, this case should be one of the most stupid, isn't it?"
she: "Absolutely.  But it's okay.  This may happen to anyone.  Life is messy"


先のロースクールに通う日本人からも弁護士リストをもらって次の日から弁護士探しを始めた。基本的に大事なことは、話をする前にその相談が無料かどうかを 尋ねること。無料の相談のなかで大体の意見や方針を理解した上で弁護料を聞き、shoppingをする。とんでもなく高い買い物なのでshoppingに 手間をかけすぎるということはない。

まずは移民専門の弁護士に電話を掛ける。作戦としては、まずvisa statusの観点から対策を検討し、その上で弁護をつけるか否かを検討する。すぐにはつながらなず後で留守番電話が 入っていることが多くて、その場合すべて聞き取るのに繰り返し聞いたりして骨が折れた。情報としては「nullあるいはdismissを得るのが望ましい (あるいは必要がある)」「弁護士はいた方がいいが自分は専門外なので刑事専門の何某を紹介する」という感じ。面白いことに、皆「この近辺で刑事事件がで きて値の張らない弁護士」を紹介してくれているはずなのにほとんどカブリがない。そうしてどんどんリストが膨れ上がっていき、同時にモチベーションが低下 していく。

刑事弁護士の方に電話を掛け始める。New Havenで一番信頼できて安価で刑事も移民もいけるという評判の弁護士は3200ドルを見積もられたので却下。総じて2500ドルくらいのオファーが多 かった。一番(ある意味)安かったのは、「1日で終われば1000ドル、それ以上かかる場合は2500ドル」という変則オファー。Moral Hazardの香りがぷんぷんする。情報の非対称が存在する以上、向こうが依頼者の不確実性を軽減する努力をするのが(競争下では)筋だ。それをしないと いうのは怪しいのでこれも却下。面白いオファーは「事件を見るに弁護士なしでも不起訴は得られる。とりあえず1日目に行ってみて上手く事が運ばないような ら僕を2000ドルで雇えばいい」というもの。これは美味しいオファーだったが、学部のdirectorが初めからちゃんと弁護士を雇えと釘を刺されたので断念した。

無料相談の範囲でそれなりに情報が得られ状況がクリアになった。どうやらまず確実にdismissal(不起訴?)は得られそうだ。 Acceraleted Rehabilitation (AR) というシステムがあるらしい。ARというのは、半年から2年間の期間の猶予を設け、場合によりその間community serviceなどをこなし、何事もなく(再犯など))期間を満了した場合に、遡及的に不起訴処分にするというもの。要するに弁護士さえ雇えば全て丸く収 まるだろうということだ。ただ、それをしないと検察官との交渉など全く未知の挑戦を自分でやらなくてはいけない。それはそれで面白そうなんだけど、最悪の 事態を考え今回はおとなしく弁護士を雇うことに決めた。

最終的に依頼したのは学部のdirector推薦の弁護士だった。決め手は価格で、裁判にならずに事が済めば1500ドル、裁判になった場合は別途請求と いうオファーだった。弁護士を雇って裁判になる可能性はまずないので、実質的には1500ドルきっちりのオファーだ。不確実性もないし価格もリーズナブ ル、事務所や弁護士の雰囲気も良かったのでサインした。生れて初めて切る小切手が1500ドルになるとは。sigh...


弁護士の提案する方針としてはまず即日不起訴決定を狙う。これは事前に検察官と交渉すれば、優しい検察官にあたりさえすれば可能性があるらしい。それが駄目だった場合は ARに申請する。ARは一生に1度しか使えないので、できれば(くだらない事件で)使いたくないところだが、検察官のあたりが悪ければそれも仕方な い。ARが通らなければ裁判だが、その可能性はとりあえず無視。もしそうなったら大人しく日本へ帰って働こう。俺は生きた伝説になる。

出廷当日、裁判所へ着くとまず弁護士だけが法廷に入り僕はそとで待っているよう言われた。裁判所には強面の犯罪者がうじゃうじゃいて独りじゃ怖いよと言っ ていた弁護士もいたが、全然そんなことはなかった。どうやら自分を雇わせようとする脅しだったらしい。学校で会う人達とはタイプは違うけど(中には Yaleの学生らしき人もいる)、別に喧嘩している人とか叫んでいる人とかはいなかった。

法廷から出てくると弁護士は状況を説明してくれた。なかで検察官や裁判官と話し合いをしていたらしい。彼によると悪い検察官にあたってしまい即日の不起訴はとれなかったとのこと。事前に話をつけておいた検察官が当日別 の法廷に行ってしまったというようなことを言っていた(そんなの有りなの?)。担当の検察官は僕に反省を促すためにARを使ってほしいのだそうだ。その代 り裁判官は良いらしく、ARの期間は3ヶ月程度の短期間で済みそうだということだった(じゃないと夏休みに日本に帰れない)。

ARを申請するために法廷内へ入る。事前に説明を受けたところによると、まず法廷では虚偽の発言をしないことを宣誓し、その後過去の犯罪歴やARの利用歴 を聞かれるので適切に答えればいいらしい。法廷内には他にも多くの人がいる。小さい事件なので順番に流れ作業のように回していくらしい。時間になると "All rise." とAlly McBealで聞いたことのあるセリフが聞こえた。立ち上がって何やら(よく分からなかったけど)説明を聞く。

自分の番になって裁判官の前に立つ。いきなり1つ目の質問で何言っているか分からない。……きっと真実のみを述べると誓いますかみたいなことだろうと思って "Yes." と答える。弁護士をちら見すると驚いた様子はないのでどうやら正解だったらしい。次の質問は今までに有罪になったことはあるかというものだったので "No," その次は今までにARを利用したことはあるかだったので "No," それからARは一生に1度しか使えないことを理解しているかと聞かれたので "Yes" とそれぞれ答えた。入国審査の申告書のようにずっとNoと答えていれば良いわけではないので冷や冷やした。語尾に "your honor" をつける余裕は残念ながらなかった(やろうと思っていたんだけど)。

時間の出廷日を決めてその日は終了。次回にARが認められるかどうかが決まる。その日はAR申請費を30ドルほど支払い、今後の説明を受けて解散した。 ショックだったのはARが認められた場合プログラム費用(名目上は更生プログラムなので)を100ドルほど支払う必要があるらしいということ。Time flies, so does money.

次回出廷日はそれから3週間ほど後だった。同じようにたくさんの人の入り混じる法廷内に入り順番を待つ。自分の番になり裁判官の前に立つと弁護士が3か月 のARを認めてほしいと言った。裁判官の方は「3ヶ月でいいの? てゆうかこれどういう事件だっけ」と言う。弁護士が事件の概要を説明してくれた(大勢の 目の前で恥を晒す気分だった。気のせいか書記の女性が笑っていたような)。事情を知ると裁判官は「はっはっは。くだらない事件だ。3ヶ月は長いね。もう今日で終わりでいいよ」。異例の「1日AR」が認められたらしい。費用100ドルを支払い初めての刑事事件は無事解決を迎えた。

事件のことを寮の人たちに話したら(彼らは僕の火災報知機のせいで真夜中に起こされてしまったので事情を知っている)、「アメリカ人はすぐ事件にするから」と苦笑していた。結局、弁護料が僕から弁護士に移転したのみで何も生み出さない事件だった。

Adjourned!!

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無題
あれ、それ使うことになっちゃったんですか??
pc 2009/03/07(Sat)17:42:54 編集
>> pc
結局使いました。
KM 2009/03/07(Sat)18:24:48 編集
なるほど
理解しました。お疲れ様でした。
pc 2009/03/07(Sat)22:36:52 編集
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