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Yaleで、遊んで学ぶ日々。

Yaleで、遊んで学ぶ日々。

囲碁、ときどきプログラミング、ところにより経済。
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人気囲碁ブログの第2回黄龍士双登杯での吉田美香八段の対局についての記事で、「中国ルールでの半コウの価値が勝負を分ける」といわれていたのを検証してみたくて、無理矢理作ってみた。
その人気ブログの記事→http://moto54reactive2.blogspot.com/2012/02/blog-post_2763.html


5路盤だけど原理的には19路でも同じことができるはず。今黒番。アゲハマはなし。日本ルールなら半コウ取ってついで黒の1目負けだが。
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KGS高段者の対局から(5d同士、互先)。

黒番。左辺の黒は。黒は△に打てば文句なく二眼の生きだけど。それだと後手。先手を取って右辺・上辺のご馳走にありつくには。
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KGS高段者の対局(6d vs 5d, コミなし)から。局面、すでに黒に勝つチャンスはなさそうだけど、左下のヨセについて考える。

白△となにやら格好いい手だが、その狙いは・・・。
img1.png




























 

プロの碁打ちの中で誰のファンか聞かれれば、僕は一番に依田紀基九段を挙げる。現役最強なら日本では張栩棋聖、山下名人、井山天元あたり。世界最強となると、中韓の棋士の栄枯盛衰が激しすぎて定義が難しい。それでも僕が依田九段を推す理由は、彼の碁に対する考え方が学者然としていて、強く共感するからである。多少大げさにいえば、勝利ではなく碁の真理を探求する姿勢が、依田九段の言葉の端々から読み取れるように思えるのである。同じ理由で、故梶原武雄九段や王銘エン九段も好き。
 
 
その依田九段が、筋場理論なる画期的な理論を発見したのだそうだ。ブログの記事から尋常でない興奮が伝わってくる→記事1記事2記事3。さて、その効用や如何に。
 
 
一流棋士の石を筋に持って行く手順も、この理論でほとんど説明できると言って過言ではない

いままでの手筋書では手筋について、「こう打つ石の調子」などとあいまいな表現だったのが、筋場理論では手筋をはっきり定義できる

大家の先生がその本の中で手筋講座をされていますが、その内容の全てが筋場理論で説明できる
 
 
と、どうやらいわゆる「筋」という曖昧なものに対して一貫性のある説明をつけるというもののようだ。良い手、悪い手を判定する公式のようなものを開発したってところだろうか。今までばらばらに理解されてきたものをひとくくりにする上位概念の提示であり、一言で言うと一般化である。
 
なぜ一般化は嬉しいのか。一般的であればあるほど良いというのは当たり前のようで、実はそこまで明らかではない。すでに知られている筋を1つの理論のもとに説明できるということは、強くなることにつながるだろうか。読みの優れた人や、十分筋に明るい人にとっては得るものは少ない。というのも、そういう人たちは理論に拠らずとも答えを出せてしまうからだ。理論が力を発揮するのは、囲碁を習いたての人に筋を説明する時だろう。依田九段自身、次のように書いている。「プロ棋士は感覚でわかっていることなので、自分が碁に勝つためだけで、人に教えようとしなければ、言葉にする必要がない」
 
依田九段が筋場理論に興奮しているのは、一つには彼が現在塾を開講していて筋を説明する必要があるということがあるだろう。しかしそれ以上に、統一的な理論の発見し、碁の真理に一歩近づいたことを喜んでいるように見える。
 
 
ところで、一般的な理論はすでに筋を理解しているプロには効用はないが、一方でコンピュータには非常に有益だ。筋をプログラムすることが難しいのは、そもそも筋を定義することが難しいからであって、もし筋場理論が(僕はまだその全貌を知らないけど)明確な定義を提供できるならば、筋を理解する囲碁AIを作ることができるかもしれない。現在、最も強い囲碁AIは、最近話題になったZenを始めとして、モンテカルロ法をベースにしたアルゴリズムで動いている→Zen関連の記事。これらは筋を理解しない。彼らにとって、筋はその場で見つけるものなのだ。依田九段の理論が、モンテカルロ王国への対抗勢力を生み出すことになったら面白い。
 
筋となると石がぶつかった時の話だが、一方で王銘エン九段の指摘する囲碁AIによるエリア認識の問題も興味深い→メイエン事件簿。彼の著作はエリア(昔はゾーンと呼んでいた)を何とか定義しようという試みで非常に面白い。彼の謙虚な動機づけを引用する。
 
私達の前に立ちはだかる無限の壁。それを読みで押し倒す者あれば、感覚で軽々と飛び越える者あり。されど、そのいずれもできずとも壁によじ登り、超えてゆこうとする者よ、ゾーンを信ずる心はそなたの足場となり、そなたの力となり、そなたの支えとなるだろう(王銘エン『ゾーンプレスパーク』日本棋院, 2003)
 
読みのすごいやつとがっぷり組み合っても勝てんのだから、何か総じてうまくいく行動指針が欲しい、ということのようだ。方向性こそ違えど、これも一般的な理論を探求するという意味において依田九段と同じだと僕は捉えている。
ニコニコ生放送で、コンピュータ囲碁のZenが武宮正樹九段に挑むという企画が行われた。まずは5子で一局、その後一番手直りでもう一局うつ。企画へのリンク


1局目(5子)。右下を丸取りされるも、上辺の黒地が大きく黒に10目ほど残った。モンテカルロ法を使ったアルゴリズムで動いているZenは、「弱いから取られた」のではなく、「助けないほうが勝つ確率が高いから助けなかった」ということになる。右辺から下辺にかけて白地が大きく、上辺の模様もまだ削減の余地がありそうで、黒が勝つのは大変に見えたのだが、どうも武宮九段は多少中盤以降緩んだらしい。コンピュータ碁は、局面が単純になる終盤に尻上がりに強さが上がる。結局上手いこと黒が残した結果になった。









5子で10目ならきっと4子なら武宮九段が勝つだろう、というのは勝手読み。Zenは大差勝ちを重視しない。簡単で1目勝つ手と、複雑だけど間違えなければ20目勝つ手があれば、Zenは前者を選ぶ。Zenは常時シミュレーションで何万回も後の手順を打ち切って勝つ確率を計算しているのだが、その中には当然「受け間違って負けた」ケースも出てくる。100%1目残せる手があるなら、95%で20目勝つが5%は負ける手は選ばない。必然的に、局面を単純にしようという戦略になるから、置き碁を勝つにはしぶとい仕組みになっている。

2局目(4子局)。序盤、左上から石が競り合う。手筋の応酬で結局白が上辺で黒の一団を取るも、若干凝り形で取らされた感触もある。開発者はZenに手筋を教えていないらしい。教えられていないけど、シミュレーションで気づくのだそうだ。たぶん、一度発見した筋を蓄積することもしていないと思う。つまり、毎回ゼロからスタートしてその筋に辿り着く。なんともピュアだ。

中央に取り残された白石が下辺に収まるまでに多少右辺が固まり、左上の大寄せに回られて大差。最後は、ヨセを緩めに緩めてそれでも20目残した。





今回の対局では、局面を単純化して勝つという姿と、石がぶつかった時の鋭さの両方を見ることができて、しかもZenの2勝という予想外の結果まで出て、大成功の企画だったと思う。

ただし、王メイエン九段が書いていたが、Zenをはじめモンテカルロ法で動く囲碁プログラムは、囲碁を解いているわけではない。プログラムは、なぜそれが良い手なのかを説明できない。答えは「やってみたらうまくいったから」。変な話、「Zenの嫌がる打ち方」を研究する余地もある。→メイエン事件簿

それから、Zenは勝っている時には局面を単純化する傾向にあるから、リードを守り切るのに長けている。今後置き石が減るにつれて、プロ相手だと序盤にリードを許す展開になると思う。そうすると、今度は単純には勝てないから、勝負手を連発するようになる。リードを守る打ち方から逆転を狙う打ち方になるので、今度は違う筋肉が必要になる。だから、一般的には置き石1つで10目ほどの差と言われているけど、たぶんコンピュータ碁についてはそれよりもう少し大きいのではないか。プロと2子局あたりで一度停滞期に入るのではないかと、勝手に予想しておこう。ちなみに、Zenは現在KGS6dだそうだから、僕から見たら遥か雲の上。アマチュアのトップレベルにはそろそろ到達しそうだ。


多分すでに色々開発者は試していると思うけど、Zen同士を対局させて序盤の定石選択のデータを取ったりすると、星と小目の長短が分かってくるかもしれない。また、現状ほぼ感覚的にしか捉えることができない「厚みの価値」も、だんだんと分かってきているらしい。神の一手はコンピュータが見つける、かも。


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